肺がんの基礎知識:まずは敵を知る
肺がんは、気管支や肺胞の細胞が何らかの原因でがん化し、無秩序に増殖することで起こる病気です。進行するまで自覚症状が現れないことも多く、「沈黙の病」とも呼ばれます。主な原因として喫煙が大きく関わっていますが、非喫煙者でも発症するリスクがあります。
ステップ1:予防のために今日からできること
最大の対策は、発症を防ぐ「一次予防」です。
禁煙する:これが最も重要かつ効果的な予防法です。本人の喫煙はもちろん、受動喫煙を避けることも大切です。
生活習慣の改善:バランスの取れた食事、適度な運動で免疫力を高めましょう。
環境要因への配慮:アスベスト(石綿) や PM2.5 などの有害物質にできるだけ曝露されない環境を整えましょう。
症例紹介:50代男性(元喫煙者)の場合
背景:30年以上の喫煙歴があり、健康診断の胸部X線で「異常影」を指摘される。
行動:すぐに呼吸器内科を受診し、低剂量ヘリカルCT(LDCT) による精密検査を受けた。
結果:ごく早期の肺がんが発見され、胸腔鏡下手術(体への負担が少ない手術)を受ける。その後、経過は良好で社会復帰を果たしている。
ステップ2:早期発見のカギを握る「検診」のすべて
肺がんで命を落とさないためには、症状がなくても受ける「検診」 が極めて重要です。
主要な検診方法の比較
| 検診方法 | 内容 | 特徴 | 対象者 |
| :--- | :--- | :--- | :--- |
| 胸部X線検査 | 肺の状態をレントゲンで撮影する | 広く普及しているが、ごく早期のがんは見落とす可能性がある | 自治体や企業の検診 |
| 喀痰細胞診 | 痰の中にがん細胞が含まれていないかを調べる | X線では写りにくい部位のがん発見に有効 | 特に高危険群(重喫煙者など) |
| 低剂量ヘリカルCT | 体への被ばく線量を抑えたCTで詳細にスキャンする | 早期発見率が飛躍的に向上。より小さな病変も発見可能 | 高危険群(特に喫煙歴のある方) |
※「高危険群」とは?
長期間にわたる喫煙歴やご家族の肺がん歴など、リスク要因を持つ方です。気になる方は、ぜひ呼吸器内科の医師に相談してください。
ステップ3:もしも「肺がん」と診断されたら~治療の選択肢~
肺がんの治療は、がんの種類(組織型)、病期(ステージ)、患者さんの全身状態によって大きく異なります。「標準治療」 を基盤に、最新の 「先進医療」 を組み合わせるのが現在の主流です。
標準治療の三本柱
手術:がんを取り除く根治的な治療法。現在は体への負担が少ない胸腔鏡下手術やロボット支援手術が増えています。
放射線治療:高精度の放射線でがん細胞を攻撃します。陽子線治療や重粒子線治療といった先進医療も選択肢です。
薬物療法:抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などがあります。特に遺伝子検査の結果に基づいて、効果が期待できる薬を選ぶ 「個別化医療」 が進んでいます。
治療の流れと「セカンドオピニオン」
診断後、主治医から治療方針の説明があります。その際は、必ず納得するまで質問をし、説明を受けましょう。また、別の病院の医師に意見を求める 「セカンドオピニオン」 を利用することも大切です。より最適な治療法を選択するための権利です。
ステップ4:信頼できる病院・医生えらびのポイント
肺がん治療では、呼吸器外科、呼吸器内科、放射線科などが連携する「チーム医療」 が重要です。病院を選ぶ際は、以下の点をチェックしましょう。
日本肺癌学会や日本呼吸器学会の認定医生が在籍しているか。
癌症治療拠点病院など、高度な診療実績があるか。
診療実績(症例数)は十分か。
複数の科が連携した 「肺癌委員会」 などで症例検討しているか。
まとめ:不安から行動へ、そして希望へ
肺がんは確かに恐ろしい病気ですが、決して不治の病ではありません。最も重要なのは、
予防可能なリスクを減らす(特に禁煙)
自覚症状がなくても、定期的な検診を受ける
もし診断されても、最新の標準治療と先進医療の選択肢があることを知る
納得のいく治療を受けるために、積極的に情報を収集し、医生と対話する
この記事が、あなたやご家族の健康を守る第一歩となれば幸いです。少しでも不安がある方は、まずはかかりつけ医や呼吸器内科への相談から始めてみてください。
免責事項:本記事で提供する情報は一般的な知識であり、具体的な診断や治療を保証するものではありません。実際の診断や治療に際しては、必ず医師や専門家に直接ご相談ください。